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目次
キャッシュフローの改善は、企業経営を安定させるために欠かせない取り組みです。
帳簿上は利益が出ていても、入金より支払いが先に発生すると、手元資金が不足して資金繰りが苦しくなるおそれがあります。
そのため、売掛金の回収を早めるだけでなく、入金額を増やす、支出を減らす、支払い時期を調整するといった対策が必要です。
本記事では、キャッシュフロー改善の基本原則をはじめ、入金と支出を見直す具体的な方法、資金管理の進め方、経営上のメリットまで解説します。
キャッシュフロー改善とは、事業に入る現金と出ていく現金の流れを見直し、手元資金を安定して確保する取り組みのことです。
利益が出ていても、入金前に支払いが重なると、資金不足に陥るおそれがあります。
ここでは、中小企業経営者がキャッシュフロー改善に取り組むべき理由について解説します。
中小企業がキャッシュフロー改善に取り組むべき理由は、手元資金の不足が事業の継続に直接影響するためです。
売上が伸びていても、売掛金の入金より仕入れ代金や人件費の支払いが先に発生すれば、資金繰りは苦しくなります。
特に、中小企業は大企業と比べて資金の余裕が少なく、取引先からの入金遅れや固定費の増加が経営を圧迫しやすい傾向があります。
キャッシュフローを改善するには、入金額と入金時期、支出額と支払い時期の4つを見直す必要があります。
資金の流れを感覚だけで管理していると、現金が不足する時期を事前に把握できません。
ここでは、キャッシュフロー改善で押さえるべき基本原則について解説していきます。
キャッシュフローを改善するには、売上を増やすだけでなく、入金までの期間を短くして、手元に入る現金を増やすことが大切です。
請求書を早く発行する、売掛金の回収期間を短縮する、前払い契約を取り入れるといった対策が有効です。
また、利益率の高い商品やサービスへ注力するほか、使っていない資産を売却すれば、入金額を増やせます。
さらに、取引先ごとの入金予定日を管理し、遅延が生じた段階で早めに確認する体制も必要です。
キャッシュフローを安定させるには、無駄な支出を減らし、現金が出ていく時期を可能な範囲で遅らせることも大切です。
家賃や通信費などの固定費を見直せば、毎月の支出を継続的に抑えられます。
また、仕入先と支払い条件を交渉したり、クレジットカードやリース契約を活用したりすれば、現金の流出時期を調整できます。
一方で、支払いを一方的に延期すると、取引先との信頼関係を損なうおそれがあるため注意が必要です。
入金額を増やすには、売上を伸ばすだけでなく、利益率や保有資産、資金調達の方法まで幅広く見直す必要があります。
売上が増えても原価や経費が膨らめば、手元に残る現金は増えません。
ここでは、入金額を増やすキャッシュフロー改善方法について解説していきます。
利益率を高めるには、売上の拡大だけを目指すのではなく、原価や経費、販売価格を見直すことが大切です。
同じ売上額でも、商品やサービスから得られる利益が増えれば、手元に残る現金も多くなります。
そのため、仕入先や仕入価格を再検討するほか、利用していないサービスや過剰な固定費を削減しましょう。
また、提供する価値に対して価格が低すぎるときは、顧客への説明を行ったうえで値上げを検討する方法もあります。
さらに、利益率の低い商品を整理し、収益性の高い商品やサービスへ経営資源を集中させることも有効です。
遊休資産を活用すれば、新たな商品やサービスを販売しなくても、入金額を増やせる可能性があります。
使っていない土地や建物、設備、車両などを売却すれば、保有資産を現金へ換えられます。
また、将来使用する予定がある資産は、賃貸やレンタルに出すことで継続的な収入源として活用できるでしょう。
一方で、使用していない資産を持ち続けると、固定資産税や保険料、保管費、修繕費などが発生し、資金流出の原因になります。
補助金や助成金を活用すると、自己資金の負担を抑えながら、設備導入や人材育成、販路開拓などを進められます。
返済が不要な制度も多いため、採択されれば手元資金を守りつつ、事業に必要な投資を行える点がメリットです。
しかし、制度ごとに対象事業や対象経費、申請期限、提出書類が異なります。
また、補助金は事業実施後に支給される制度もあり、費用を一時的に立て替えなければならないことがあります。
銀行融資などを利用すると、手元資金を確保し、運転資金や設備資金の不足を補えます。
必要な資金を借り入れることで、売掛金の入金を待つ間の支払いや、事業拡大に必要な投資にも対応しやすくなります。
資金の用途に合った融資を選べば、返済期間や返済額を調整し、毎月の負担を抑えられるでしょう。
そのため、必要額を明確にし、将来の収支を踏まえて無理のない返済計画を立てることが大切です。
入金までの期間を短くすると、売上を早く現金へ換えられるため、資金繰りを安定させやすくなります。
請求から入金までの流れを見直し、回収の遅れや未回収を防ぐ仕組みが必要です。
ここでは、入金スピードを早めるキャッシュフロー改善方法について解説していきます。
売掛金の回収サイクルを短縮すると、売上を早く現金へ換えられるため、資金繰りが安定しやすくなります。
まずは、納品やサービス提供が完了した段階で請求書を速やかに発行し、取引先へ送付できる仕組みを整えましょう。
また、契約を結ぶときに支払い条件を確認し、可能であれば月末締め翌月末払いから翌月初旬払いへ変更するなど、入金期限を短くする交渉も有効です。
前払いや前受金を契約条件に取り入れると、商品やサービスを提供する前に現金を確保できます。
特に、仕入れや外注費が先に発生する取引では、必要な費用を自己資金だけで立て替えずに済むため、資金繰りの安定につながります。
また、大口案件では着手金を受け取り、残額を納品後に請求する方法も有効です。
継続サービスであれば、月額料金を前払いにすることで、毎月の入金時期を一定にできます。
売掛金の管理を徹底すると、入金遅れや未回収を早期に把握し、資金繰りの悪化を防ぎやすくなります。
売掛金は売上として計上されていても、取引先から入金されるまでは支払いに使える現金ではありません。
また、予定日を過ぎても入金が確認できない時は、放置せずに請求書の到着状況や支払い予定を確認しましょう。
さらに、新規取引先や支払い遅延が続く企業とは、取引限度額を設定したり、前払いへ変更したりする方法があります。
支出を減らすことは、売上を増やさずに手元資金を残せるため、取り組みやすいキャッシュフロー改善策です。
特に、固定費や仕入れ費、在庫の保管費は継続して発生するため、放置すると資金繰りを圧迫します。
ここでは、支出を減らすキャッシュフロー改善方法について解説していきます。
固定費や経費の見直しは、一度削減すれば継続的な効果を得やすいため、キャッシュフロー改善に有効です。
家賃や通信費、保険料、リース料、各種サービスの利用料は、売上にかかわらず毎月発生します。
そのため、まずは経費の明細を一覧にして、長期間使用していない契約や、利用状況に対して料金が高いサービスがないか確認しましょう。
また、複数の通信契約や保険に重複がないかを調べ、現在の事業規模に合うプランへ変更する方法もあります。
仕入価格を見直すと、商品やサービスの品質を保ちながら支出を抑え、手元に残る資金を増やせます。
同じ商品や材料でも、仕入先や発注量、契約期間、支払い条件によって価格が異なることがあります。
そのため、複数の仕入先から見積もりを取り、市場価格や他社の条件と比較して、現在の仕入価格が妥当か確認しましょう。
なお、長期取引や発注量の増加を条件として提示すれば、単価の引き下げや送料の削減につながる場合があります。
不良在庫を処分し、適正な在庫量を保つことは、現金が商品として滞留するのを防ぐために大切です。
売れ残った商品はすぐに現金化できないだけでなく、倉庫代や管理費、品質維持にかかる費用も発生します。
そのため、長期間動いていない在庫を確認し、値下げ販売やセット販売、アウトレット販売などで早めに現金へ換えることが必要です。
販売が難しい在庫は、保管を続けた場合の費用と処分費用を比較し、廃棄も含めて対応を検討しましょう。
採算の合わない事業や資産を持ち続けると、売上を生まないまま維持費や人件費、管理費が発生し、手元資金を減らす原因になります。
そのため、収益性が低く、今後も改善が見込めない事業や資産は、売却して現金化する方法を検討しましょう。
例えば、長期間使用していない設備や車両、稼働率の低い拠点を売却すれば、売却代金を得られるだけでなく、保険料や修繕費などの固定費も削減できます。
また、事業を譲渡して得た資金を、成長が見込める分野へ振り向ける方法もあります。
適切な節税対策を行うと、税負担を抑えながら、事業に必要な手元資金を残しやすくなります。
まずは、事業に関係する経費の計上漏れがないかを確認し、自社が利用できる税額控除や特別償却、各種特例を把握しましょう。
また、決算前に利益の見込みを確認し、将来必要になる設備や消耗品を適切な時期に購入する方法もあります。
一方で、節税だけを目的として不要な商品や設備を購入すると、納税額は減っても、手元の現金まで失われます。
支払い時期を調整すると、現金を手元に残せる期間が長くなり、入金までの資金不足を防ぎやすくなるでしょう。
しかし、取引先の同意なく支払いを遅らせる行為は、信頼関係や今後の取引に悪影響を及ぼします。
ここでは、支払いを遅らせるキャッシュフロー改善方法について解説していきます。
支払いサイトを後ろ倒しにできれば、仕入れ代金や外注費を支払うまでの期間が長くなり、手元資金を確保しやすくなります。
特に、取引先からの入金より仕入先への支払いが早い契約では、その期間の運転資金を自社で用意しなければなりません。
そのため、支払い日を翌月末から翌々月末へ変更するなど、入金時期に合わせた条件を交渉することが不可欠です。
経費をクレジットカードで支払うと、利用日から口座引き落とし日までの期間、現金の支出を先送りできます。
例えば、月初に利用した代金が翌月末に引き落とされる契約であれば、その間は現金を手元に残せます。
また、利用明細を会計ソフトと連携すれば、支払先や金額を把握しやすくなり、経費管理の手間も減らせるでしょう。
一方で、利用額が増えすぎると、引き落とし日に多額の現金が必要になり、資金繰りを悪化させるお惹があります。
リース契約を利用すると、高額な設備や車両、OA機器などを一括購入せず、毎月の支払いに分けて導入できます。
一度に多額の現金を支出する必要がないため、設備投資後も運転資金を手元に残しやすい点がメリットです。
また、毎月のリース料が一定であれば、将来の支出を予測しやすくなり、資金繰り表にも反映しやすくなります。
契約内容によっては、保守や修理の費用が含まれることもあり、設備管理の負担を軽減できるでしょう。
ただし、リース契約は原則として途中解約が難しいため、契約内容の確認が欠かせません。
税金を一時に納付することが難しい場合は、税務署へ申請することで、納税の猶予が認められることがあります。
猶予が認められれば、一定期間に分けて納付できるため、資金繰りの急な悪化を抑えやすくなります。
なお、申請時には、納付が困難な理由や今後の納付計画などを示す必要があります。
さらに、延滞税が発生する可能性もあるため、納付が難しいと分かった段階で、早めに税務署や税理士へ相談することが大切です。
キャッシュフローを継続的に改善するには、入金や支出を調整するだけでなく、資金の流れを正確に把握できる仕組みが必要です。
入出金の予定を管理していなければ、対策が必要な時期を判断できません。
ここでは、4大原則以外で効果が高いキャッシュフロー改善策について解説していきます。
資金繰り表を作成すると、将来の入金予定と支払い予定を時系列で確認できるため、資金が不足する時期を事前に把握できます。
表には、売上代金の入金、仕入れ代金、人件費、家賃、税金、借入金の返済など、現金の増減に関わる項目を記載します。
また、月末の現金残高を計算すれば、どの時期に資金が減り、いつ余裕が生まれるのかを確認しやすくなるでしょう。
会計ソフトやITツールを活用すると、入出金の記録や集計にかかる作業を減らし、資金状況を速やかに確認できます。
銀行口座やクレジットカードと連携できるサービスであれば、利用明細を自動で取り込み、手入力によるミスや記録漏れを防ぎやすくなります。
また、請求書の発行や売掛金の管理に対応したツールを利用すれば、請求から入金確認までの流れを一元化できるでしょう。
キャッシュフローが悪化したときは、現金が不足した原因を特定し、状況に合った対策を行う必要があります。
売上が伸びていても、入金と支払いの時期がずれていたり、売掛金や在庫が増えたりすると、手元資金は減少します。
ここでは、キャッシュフローが悪化する主な原因について解説していきます。
仕入れ代金や外注費などの支払いが売上代金の入金より先に発生すると、帳簿上は利益が出ていても手元資金が不足しやすくなります。
例えば、仕入先へ月末に支払い、販売先から翌月末に入金される契約では、約1か月分の資金を自社で用意しなければなりません。
また、売掛金の回収期間を短くする、前受金を受け取る、仕入先への支払いサイトを見直すといった対策が必要です。
取引先の与信管理が不十分だと、支払い能力の低い企業と多額の取引を行い、売掛金を回収できなくなるおそれがあります。
与信管理とは、取引先の経営状態や支払い実績を確認し、取引額や支払い条件を決めることです。
特に、新規取引先や取引額が急に増えた企業については、事前の確認が欠かせません。
そのため、決算情報や登記情報、信用調査会社の情報などを参考にし、支払い能力や財務状況を確認しましょう。
売上の急な増減に対応できていないと、必要な運転資金を確保できず、キャッシュフローが不安定になります。
売上が急増したときは、仕入れ代金や外注費、人件費が先に増えるため、売掛金を回収するまでの資金が不足することがあります。
一方で、売上が急減すると、家賃や人件費などの固定費が重くなり、手元資金が減りやすくなるでしょう。
そのため、過去の実績や受注状況を基に売上を予測し、資金繰り表も定期的に更新することが大切です。
過剰在庫や不良在庫を抱えると、仕入れに使った資金が商品として残り、現金へ戻らない状態が続きます。
在庫は販売できるまでは手元資金として使用できず、倉庫代や保険料、棚卸しにかかる人件費なども発生します。
また、商品が古くなったり流行が変わったりすると、値下げしなければ売れず、利益まで減ってしまうでしょう。
定期的に棚卸しを行い、売れ筋商品と長期間動いていない在庫を分けて確認することが大切です。
利益配分のバランスが崩れると、決算上は黒字でも、事業に必要な手元資金が不足する原因になります。
利益を配当や役員報酬、設備投資へ過度に回すと、運転資金や将来の支出に備える資金を確保しにくくなるためです。
そのため、利益が出たときは、内部留保や借入返済、成長投資、配当へどの程度配分するかを慎重に判断する必要があります。
また、役員報酬を見直す場合は、定期同額給与などの税務上の要件を確認しなければなりません。
キャッシュフローを改善すると、日々の支払いに必要な現金を確保できるだけでなく、経営判断の幅も広がります。
手元資金に余裕があれば、売上の減少や急な支出にも対応しやすくなり、金融機関や取引先からの信用も高められるでしょう。
ここでは、キャッシュフロー改善で得られる経営メリットについて解説していきます。
キャッシュフローを改善すると、毎月の支払いに必要な現金を確保しやすくなり、経営基盤が安定します。
売上が一時的に減少したり、設備の故障などで急な支出が発生したりしても、手元資金に余裕があれば事業への影響を抑えられます。
また、人件費や仕入れ代金、家賃などを期限どおりに支払えるため、従業員や取引先との信頼関係も維持しやすくなるでしょう。
資金不足への不安が減れば、短期的な支払いだけに追われず、中長期的な視点で経営判断を行えます。
キャッシュフローが安定している企業は、返済や支払いを継続できると判断されやすく、金融機関や取引先からの信用が高まります。
金融機関は融資審査を行う時、売上や利益だけでなく、借入金の返済に充てられる現金が生まれているかを確認します。
そのため、営業活動から安定して現金を得ている企業は、融資を受けやすくなったり、金利や返済期間などの条件を相談しやすくなったりするでしょう。
キャッシュフローが改善すると、設備導入や人材採用、販路拡大など、成長に向けた投資を検討しやすくなります。
手元資金に余裕があれば、将来性のある事業機会を逃さず、必要な時期に資金を回せるためです。
一方で、資金繰りが不安定な状態では、有望な計画があっても実行を見送らなければならないことがあります。
また、補助金や助成金は、採択や対象経費などの要件を満たすことで、投資に伴う資金負担を軽減できる制度です。
キャッシュフロー改善の目的は、売上や利益を増やすだけでなく、現金が入る時期と出ていく時期を整え、安定した資金繰りを実現することです。
具体的には、利益率や入金額を高める、売掛金を早く回収する、固定費や在庫を減らす、支払い条件を見直すといった対策が挙げられます。
また、資金繰り表や会計ソフトを活用し、将来の入出金を把握することも欠かせません。
手元資金に余裕が生まれれば、急な支出や売上の変動にも対応しやすくなり、金融機関や取引先からの信用向上にもつながります。

葭中 直博
YOSHINAKA NAOHIRO
営業統括部長
資格
貸金業務取扱主任資格者・3級ファイナンシャル・プランニング技能士
略歴
大手金融会社で1996年より融資部門において営業・業務管理などの管理職を歴任。
2009年8月より株式会社アップスに入社し、現在営業部トップの営業統括部長として日々金融部門のディレクションを行っている。
座右の銘
愚行遺残(ぐこういざん)
根気よく努力を続ければ、山をも動かせるなど、どんなに難しいことでもいつかは必ず成功させれること